変に男前なところは相変わらず 意地を張り、頑なとして自分の心を開こうとしないのも相変わらず けれど、婀娜めかしさだけは、会う度に、増している 輪郭 「っん…」 白い白い、雪のように白く決め細やかな肌に、唇を当ててキツク吸い上げれば、紅い花びらが一つ。 「…ッユン、見える、ところには…」 「分かってるよ」 小さな牽制を、はいはいと受け流して、首筋にもう一度、唇を押し当てた。 明らかにこれは見えるななんて心密かにほくそ笑んで、ソレを撫ぜる。 「…僕ね、会う度に、これが消えているのを見ると、凄く不安になるよ」 「……ど、して…」 「これが消えるのと同時に、ヨンサの僕への思いも消えちゃってるんじゃないかって…」 「っ、くだらな…い」 英士は、どこか、不快そう眉を顰めた。 くだらないくだらない…かもしれないけれど… 「俺ッ、は……っぁ…」 「ヨンサは、いつも冷静だったし、いつまでも僕に興味を持っていてくれるなんて、限らなかったから…何か、確かに存在するモノで、ヨンサを繋ぎとめておきたいと」 いつも思ってたよと、そんな真面目な話を吹っ掛けておきながら、手だけは、止まらずに止まらずに… 「…ッ、ユンッ、俺は…!そんな…っああ…!」 散々弄られた突起は、てらてらと妖しく光っていた。 ソレを指で摘めば、英士は悩ましげな声を上げて、体を弓形に反らせた。 「…こんな時にする話じゃなかったね。ごめん」 「ユン」 「…忘れてくれて、構わないから」 「ユンッ!」 少し大きめの声で、潤慶は漸く英士を見上げた。 「俺の話も聞いて」 「…うん」 「…俺はそんな一時の感情で、誰かとこういう事をする気はないよ」 大きく息を吸って、吐いて。 覚悟を決めたような瞳を、潤慶から逸らして、英士は気恥ずかしそうに言い放った。 「…」 「…ユン?」 「……ッヨンサァ〜ッ、僕、やっぱりヨンサのそういう男前なところ、大好き〜っ」 「ちょっ、情けない声出さないでくれる!?気色悪いよ!」 「酷いけど大好きーっ」 嬉しい その一言がこんなにも嬉しいと 不安も一入だけれど 今だけは不安なんて、見て見ぬふりだと 「よぉっし、今日は僕、張り切っちゃうからねー」 「……張り切らなくて良いよ」 馬鹿だなんて言葉、何度浴びせられた事か分からないけれど、その言葉には棘なんてなくて、寧ろまるで英士の素肌のような柔らかさで、潤慶の鼓膜を擽った。 トントンと踵を靴に仕舞い入れていると、後ろから声が降ってきた。 「…本当に、行っちゃうの?英士起こしてこなくて良いの?」 「はい、ヨンサまだ寝てるみたいだから、起きるまで待ってあげて下さい」 「気を付けて帰りなさいね」 はいと微笑んで立ち上がる。 鞄を手渡されて、ドアノブに手を掛ける。 「そうだ。ヨンサに、跡が消える前にまた会おうねって言っておいて下さい」 「…あと?」 「約束の印です」 「……分かったわ、伝えておく」 「ありがとう」 タクシーが見えなくなるまで、手を振る英士の母の姿を見て、潤慶は、ふぅと息を吐いた。 「本当は笑ってる顔の方が良かったんだけどねー」 携帯を開いて、フォルダの中の一枚。 ぐっすりと眠る英士のその顔に、潤慶は、一人、笑みを隠せないでいた。 |