恋の奴 後
「寂しくって、俺の事考えてシた?」

「…は…?」
恋の奴
なァ? と頬、瞼、鼻、と口付けを落とす合間合間に、三上は問うた。

笠井はソレを受けながら、声に出さずに笑った。



「修学旅行でそんな事するヤツいるなら見てみたいですよ」

「俺はした」

「え!?」

「お前の写真見てヌいた」

「…そんなに俺の事、好きですか」

「そうみたいだな」



じゃなきゃ、こんな面倒な事、しねぇって……多分


と言って笠井の服を、がばり と脱がせた。



「浮気しなかったかー?」

「っ、するわけ、なっ い」

「どうだかな」

「…っぅ、あ……好きなら、信じて…っ」

「…分かった」

「あは、ダメ 人間だな …ぁ」



紅い舌を、ちらり と見せて三上はその突起を口へと含む。


ゆっくりゆっくりとした焦れったいまでもソレに、笠井は短く息を吐いた。



「京都で温泉とか、入ったのか?」

「…ぇ ?」

「何か、スベスベな」

「っ、ば か…」

「ンなバカ相手に感じてんのは誰だよ、タクミちゃん」

「っあ、や…触らな …っ!!」



きゅ と突起を摘まれて、ビリリ と電気が走ったような痛みが体を駆け抜ける。


もう片方の手は、ぐたり として動かないのを良い事に、その肌のきめ細かさを堪能するようにゆっくりと撫でた。



「せん、ぱ…い こそ」

「んー?」

「……うわき、…しなかった…?」

「当たり前だろ。…こんなに感じてくれるヤツいるんだから、他はいらねぇよ」

「…何か…素直に喜べない…んですけど…」

「すぐ悦べるようにしてやるって」

「ちが…っ、だ、…っめ…!!」



ハッ とした頃には既にもう手遅れ。

慣れた手付きで、ズボンを下着ごと取り払われて、笠井を纏う物はなに一つとして無くなる。



「浮気はしなかったみてぇだな」

「っ…さっき 信じ るって言ったのに…」

「んー、そりゃ信じちゃいるけどよ」



タクミちゃんは可愛いからな


そう独り言を吐いて、三上は先走りが溢れるソレを優しく握って、上下に扱いてやる。



「ッ、だめ…!」

「どうして」

「っあ、だ、って……や、や…っ」

「一回イっとけ」

「っ、ま …っ…あ、ぁっ …ぅあっ……っ――――っっっ!!!」

「ッバカ、お前………っあーあー…」



ふるり と体を震わせて、それから、ぐたり とベッドへ沈み込む。


三上はその笠井の手を取って、血が滲んだ指先を銜えた。



「声出せよ」

「…い、やですよ…」

「じゃあせめて指は噛むな」

「先輩には関係な…」

「ピアノしてる大事な指だろ」

「………っ」

「分かったか?」

「……」

「返事」

「はい」

「よし」



いいこ と頭を撫でてやると、子供扱い と笠井は頬を膨らませた。



「ガキにこんなイイ事、してやらねぇよ俺は」

「…あっそう」

「お、照れちゃって可愛いなぁ」

「ッ、別に照れてなんか…!」

「じゃ、こっちも準備万端っぽいし、挿れんぞ」

「えっ、ちょ、ま…っ」



にしたって暑いよなぁ と三上は着ていた服を乱暴に脱いで、放り捨てた。


そうして、喚く笠井の口を自分のソレでもって塞いで、屹立した自身を、笠井に宛がう。



「んんんぅっ!!」



卑猥な水音が、鼓膜を震わせた。



「ぁ、やああ! まっ…せんぱ、…っあああぁっ」

「っ、あんま締めると、ナカに出すぞ」

「っや、だって…、せんぱいが…っっああっ」



眉を顰めて甘美な痛みに涙を零す笠井のソレを拭い取って、汗に張り付いた前髪をどかしてやる。


そんな優しい行動とは裏腹に、貪る という言葉通りに、三上は腰を打ちつけた。



「っせんぱ、はげし…っ や、ああぁっ」

「ッ、名前、呼べって…」

「っうあっ せんぱいっ ゆっくり…っも、壊れ…っ」

「竹巳…っ、亮 だろ…っ」

「っもお…!ひゃあっ ッ、あき、らぁ!……亮ぁっ」

「ったく、み……ッ」

「あああっ、や、も…っ!だめ……っ」



グッ と奥へ貫くようなその律動に、笠井は、ギリリ と三上の背中に爪を立てる。



そのまま達した締め付けに耐え切れず、三上は笠井の中へと熱いソレを吐き出した。





「ゔー…サイアクだぁー…」



ふとそちらを見やれば、汗と涙に濡れたその顔がキラキラと光っていて、綺麗だな なんてぼんやり思いながら、三上は笠井に口付けた。



「キスとか、しないでもらえます?」

「…何で」

「何でじゃないですよー…」



情事後の甘ったるい雰囲気に流されそうになるのをグッと堪え、笠井は枕に顔を埋めた。



「明日から学校」

「そうだな」

「俺、修学旅行で疲れて」

「知ってる」

「しかも中出しされ」

「悪かったって。俺が出してやるから。ほら、立てって」

「腰痛いー」

「ほらー、早くしろ」

「うえー、鬼ー」



行くぞ と部屋に取り付けられた小さなシャワー室へと抱き上げられてそこへと向かう。



そして



「第二ラウンドな」

「ぎゃー、死ぬー」



そんな悲鳴が、室内にまで響いたとか。