矛盾 2
ドクドクと心臓が跳ね上がる。

息がうまくできないよ。
矛盾
信じられないと藤代の声が上ずる。


笠井は、切なげに眉を寄せて、ただひたすらに床を見つめた。



「何だよあれっ…タクという人がありながら…っ三上せんぱ…」

「誠二…ッ!」



声を荒げてそちらに向かおうとする藤代を、震える笠井の手が掴んでソレを静止させる。

俯くまま、くぐもった声が、その場に小さく響く。



「相談ってのは…この事なんだ……だから、良いんだ」

「タク…」

「良いんだよ」



床に雫が落ちたのを見て、藤代は憤る思いを必死で静めて、笠井の手を引いた。


友人が泣くのは悲しい、泣かす相手を怒ってやりたいけれど、それはきっともっと泣かせてしまうから…

怒りを顕に、荒々しく歩く藤代と、その後を引っ張られるようにして付いていく笠井。



「…笠井?」



ざわめき出す廊下、不意に目をやれば、見慣れた二人の後姿。



「三上君?」

「…ああ、うん。それでだけどさ…」



けれど、三上はソレを黙って見送った。





「っぐ…ひぐ…っ」

「タク!」

「なにさ…」

「泣くな!」

「…泣いてる人の言う台詞じゃないよ」

「こんなブッサイクな顔、キャプテンに見られたら俺死ぬーっ」



階段を上りに上って一番上。


屋上に繋がるドアは、錆びて、けれど堅く施錠されている。

踊り場の壁に寄り掛かって、ずるずると腰を下ろした。



「プレゼント、期待してるからな」



隣で必死に涙を拭う藤代と、自身の嗚咽に混じって、ポケットの中、ぐしゃりと音がした。