ドクドクと心臓が跳ね上がる。 息がうまくできないよ。 矛盾 信じられないと藤代の声が上ずる。 笠井は、切なげに眉を寄せて、ただひたすらに床を見つめた。 「何だよあれっ…タクという人がありながら…っ三上せんぱ…」 「誠二…ッ!」 声を荒げてそちらに向かおうとする藤代を、震える笠井の手が掴んでソレを静止させる。 俯くまま、くぐもった声が、その場に小さく響く。 「相談ってのは…この事なんだ……だから、良いんだ」 「タク…」 「良いんだよ」 床に雫が落ちたのを見て、藤代は憤る思いを必死で静めて、笠井の手を引いた。 友人が泣くのは悲しい、泣かす相手を怒ってやりたいけれど、それはきっともっと泣かせてしまうから… 怒りを顕に、荒々しく歩く藤代と、その後を引っ張られるようにして付いていく笠井。 「…笠井?」 ざわめき出す廊下、不意に目をやれば、見慣れた二人の後姿。 「三上君?」 「…ああ、うん。それでだけどさ…」 けれど、三上はソレを黙って見送った。 「っぐ…ひぐ…っ」 「タク!」 「なにさ…」 「泣くな!」 「…泣いてる人の言う台詞じゃないよ」 「こんなブッサイクな顔、キャプテンに見られたら俺死ぬーっ」 階段を上りに上って一番上。 屋上に繋がるドアは、錆びて、けれど堅く施錠されている。 踊り場の壁に寄り掛かって、ずるずると腰を下ろした。 「プレゼント、期待してるからな」 隣で必死に涙を拭う藤代と、自身の嗚咽に混じって、ポケットの中、ぐしゃりと音がした。 |