「みーかみせーんぱーい」 「キャップテェ〜ンッ!!」 「ブッ」 「…何だァ?」 ある休み時間の出来事 「…ゲホゲホッ、今の声って…」 飲んでいた渋茶を喉に詰まらせて咽る渋沢を他所に、三上は声がした外を見る。 窓縁に寄り掛かってグラウンドに目をやる。 「ああ、あいつらだな」 勿論、あいつらというのは藤代と笠井である。 二人は体操服に身を包んで、こちらに向かって手を振っていた。 「オイお前らー!特に馬鹿代、つーか馬鹿代。お前変な声出すから愛しのキャプテン様は鼻から日本茶吹いちまったぜー」 「えぇー!マジっスかー!キャプテーン、大丈夫ですかー?」 「三上!嘘を言うな、嘘を。藤代、俺は吹いてなんかいないからな」 「あははー、日本茶まみれでも俺はキャプテンを愛してますよー」 「だから違うって…」 窓の縁で頭を抑えて首を振る渋沢に苦笑いを堪えて、また窓の外に目をやる。 「笠井ー」 「…何ですかー?」 「お前は言ってくんねぇのー?」 「?」 ニヤリと悪戯な笑みに笠井は眉を寄せた。 「愛してるってー」 「言うわけないじゃないですか」 「即答してんじゃねぇよ」 「そりゃ即答しますって」 「俺は愛してるぜー」 「……ッ」 そんな事を大声で…と渋沢のように額を押さえ、頬を朱に染めた笠井に笑いを零す。 と、授業始まりのチャイムが響いた。 「あ、集合かかってる。タク、行こう」 「うん、それじゃあ三上先輩」 「おー、見ててやるから精々頑張れ」 これで会話は終わりだと思っていれば、笠井はその場につっ立ったまま動こうとしない。 「…笠井ー?」 「タクー、先行っちゃうよー?」 「…ッ先輩!」 「何だよ」 「………お、俺も」 笠井が言葉を発せずに口を動かした。 あいしてる 「……」 「行こ、誠二!」 「…今何て言ったの?」 「何でもない」 藤代の背を押してグラウンドの中央へ駆けて行く笠井をボンヤリと見ていると、教室の先生が入ってくる。 渋沢がこちらに目を向けた。 「三上、座った方が良いぞ」 「……」 「三上」 「あ、ああ」 「席つけー、出席取るぞー」 机に目を向けて、ボンヤリと思考を整理していると、渋沢がこちらを向いた。 「良かったな」 「……黙れ」 ニヤニヤしている渋沢がこの上なくキモかったので取り合えず、一発思い切り殴っておいた。 今晩はご褒美やらないとな…などと考えていたら、渋沢がまだこちらを見ていた。 「藤代には言っておこう」 「…」 「明日も平日だからあまり励むなよ」 「死ね」 椅子にドカリと蹴りを入れて渋沢が呻いたのは言うまでも無い。 |