夢の中でその人は言った 泣きたくなったら空を見上げて この空は、俺のところまで繋がっているから Take by surprise 『……この武蔵森学園に入学するという事は、誇るべき事であると同時に、これからは一武蔵森学園の生徒として規律を重んじ……』 ふぁ…と出かけた欠伸を手で押さえてなんとか止める。 じんわり滲んだ視界を擦っていると、トントンと肩を叩かれた。 チラリと隣に目だけやると、誠二がニコリと笑って、小声で話しかけてきた。 「校長の話、長いなー」 「誠二、前向いてないと怒られるよ」 「はいはい」 なんだよその生返事はーと膨れる誠二に俺は小さく溜息を付いた。 体育館に着いて、受付から貰ったパンフレットに従って席に付いてみれば、偶然にも隣の席は誠二で今に至る。 「にしてもさ、寮室も同じでクラスも同じだなんて運命感じるよね」 「単なる偶然だろ」 「ひどっ」 「あは、ごめん。うそだよ」 目線はそのまま前を向いて、口だけ小さく動かして返事を返す。 『では、これからの君達の活躍に心から期待している。…以上』 ふと校長の話が終わったので一旦会話を中断する。 起立、礼という号令に従って、俺も誠二も他の生徒も頭を下げた。 「でさー」 「ん?」 『続いては、新任の先生達の紹介です。右から順に、渋沢先生、三上先生、中西先生……』 え………? 一瞬、本当に自分の中で時間が止まった。 少なくともその瞬間は、誠二の言葉も司会者の言葉も、何も耳に入らなかった。 教壇に立っている数人の、新任の先生達の中に、その人はいた。 あの時と同じ、ニヤリと、あの皮肉を込めた笑みを具えて、立っていた。 |