beloved 1-3
夢の中でその人は言った


泣きたくなったら空を見上げて

この空は、俺のところまで繋がっているから

Take by surprise
『……この武蔵森学園に入学するという事は、誇るべき事であると同時に、これからは一武蔵森学園の生徒として規律を重んじ……』



ふぁ…と出かけた欠伸を手で押さえてなんとか止める。

じんわり滲んだ視界を擦っていると、トントンと肩を叩かれた。


チラリと隣に目だけやると、誠二がニコリと笑って、小声で話しかけてきた。



「校長の話、長いなー」

「誠二、前向いてないと怒られるよ」

「はいはい」



なんだよその生返事はーと膨れる誠二に俺は小さく溜息を付いた。

体育館に着いて、受付から貰ったパンフレットに従って席に付いてみれば、偶然にも隣の席は誠二で今に至る。



「にしてもさ、寮室も同じでクラスも同じだなんて運命感じるよね」

「単なる偶然だろ」

「ひどっ」

「あは、ごめん。うそだよ」



目線はそのまま前を向いて、口だけ小さく動かして返事を返す。



『では、これからの君達の活躍に心から期待している。…以上』



ふと校長の話が終わったので一旦会話を中断する。


起立、礼という号令に従って、俺も誠二も他の生徒も頭を下げた。



「でさー」

「ん?」



『続いては、新任の先生達の紹介です。右から順に、渋沢先生、三上先生、中西先生……』



え………?



一瞬、本当に自分の中で時間が止まった。


少なくともその瞬間は、誠二の言葉も司会者の言葉も、何も耳に入らなかった。



教壇に立っている数人の、新任の先生達の中に、その人はいた。


あの時と同じ、ニヤリと、あの皮肉を込めた笑みを具えて、立っていた。