700HIT 存在 Dear:円香様
桜吹雪が、キレイだった。

淡いピンク色をした桜が、俺の頬を掠めて地へ落ちる。



それに混じって、オレの目から垂れた透明な雫も、地へ落ちた。

それは決して涙なんかじゃないんだ。
存在
「じゃあ何なの、それ」

「……ぐず…目水…だよ…」

「意味分かんないよ」



ぶわっ…と強めの風がふいて、短い髪が、風に揺れた。



「タク」

「ん?」



声が少しくぐもっているのは、俯いてるからであって、鼻声だからじゃない。



「オレ、笑えてた?」

「うん、バカみたいに笑ってた」

「あはは、酷いなぁ」

「ホント、バカみたいに頑張って笑ってたよ」

「あは、だから…バカは、酷く…ない?」



『酷く』と『ない』のあいだに間が空いたのは、頭に重みが乗かってきて、それに驚いたからで。


俺の頭に乗ったタクの手が髪を掻き混ぜるから『ない』と言った声が震えたんであって。



決して、また、涙が滲んだからじゃない。



「もう頑張んなくて良いよ」

「べっ、別に、頑張ってなんか…」

「じゃあ言い方を変える。もう無理なんてしなくて良い…しなくて、良いんだよ…」

「むり…な、…んて………し……―――――ッッ…うぅ…っ………」

「俺の前でガマンなんかするなよ」

「――――っっ………タクぅ――――っっ!!!!」

「うん、よく頑張ったな…」



やっぱり、どう足掻いたって、俺は泣いてるんであって。


寂しいからだとか不安だからだとか悲しいからだとか、そんな理由で涙が出そうになるけれど


やっぱりタクだから、その涙が零れるんであって



タクだから

タクが優しいから

タクが温かいから

タクが俺の友達で

タクが俺の理解者だから

タクが俺の一番だから……



えらいえらい、なんてタクは幼い子供を宥めるように、ずーっとずーっと、背中を撫でてくれていた。


それでまた、俺の涙腺が弱まるもんだから、体中の水分使い切る勢いで泣いた。





「…泣き止んだの?」

「…まぁ…」



体をゆっくり離せば、少し心配したような瞳とぶつかった。

笑おうとしたら、乾いた涙が張り付いた頬が引き攣って、少し痛かった。



「…ぶっ、変な顔」

「うるさい」

「…でも…うん、大丈夫そうだね」



小さく頷いて、それからオレはすくっと立ち上がった。



んんーっと伸びをした時、ふわりと頬を撫ぜた風に目を閉じた。

何だか、清清しくて、晴れやかで。


瞼の裏から眩しさが伝わってきて目を開ければ、桜木から木漏れ日が注いでいた。


ゆっくり空に手を伸ばして、手の平をかざして、太陽か、はたまた桜か、何かを掴むように手を握った。

勿論、何も掴めてないけど…



「タク」

「なに」

「3年になっても宜しくな」

「うん」


「頑張ろうな」




700hit Thanks円香さまへ
リク内容『笠藤で CPでも友情でも 三年生が卒業した後』

リクありがとうございました。