あと少しだけ
チャイムが鳴り響く。
あと少しだけ
最後の最後。


何度も何度も頭にそう言い聞かせているのに

やっぱりとてもとても名残惜しくて名残惜しくて

一層強く抱き締めたら、塞がれた口から呻き声が漏れた。



逃げ惑う舌を優しく絡めて、逃がさないと言わんばかりに吸い上げて、漸く唇を離した。



ぐたり と10代目は倒れ込むように俺の胸に顔を埋めた。

その細くてしなやかな体を離したくなくて、キツクイツク抱き締めた。



「…くっ苦しいよ、獄寺君…」

「すみません…」

「…先生、来ちゃうよ?」

「知ってます」



そう言って、また、ギュウ と抱き締めた。



「獄寺君?」

「……」

「獄寺君てば…」

「………」

「………もう…仕方無いなぁ…」



逃げないから離して と諭すように言えば、ゆるりゆるり、腰に回った手の力が緩まった。



俯いた顔に手を添えて覗き込めば

今にも涙が溢れてきそうな

そんな顔をしていた。


予想通りと言おうか…

込み上げてくるこの感情を止める術をオレは知らない。



「あと1時間だけだよ?」



踵を上げて、目線を少し近づけて。

コツン と額を合わせて微笑めば。


君は泣きそうな顔して、すみません と小さく微笑んだ。