今思えば

あの時目が覚めたのは、偶然じゃなくて、必然という名の運命だったんじゃないかな なんて

自分には似合わないクサイ台詞が出てきた事に、乾いた小さな笑いと、涙が一つ、零れ落ちた。

ディア マイ シスター

しん と静まり返ったその部屋で、舞織は不意に目を開けた。



「……寝る前に飲んだ紅茶がいけなかったんですかね」



もう一度布団に潜り込んで寝てしまいたいところだが、そうはいかないようだ。


舞織は一人、ぽつり とそんな言葉を零して体を起こす。

ドアを開ければ、闇が広がるその廊下、寝静まった兄達を起こさないよう、忍び足で階段を下りた。






「……あれ?」



トイレのドアノブに手を掛けて、ふと、視線の端に光がチラついた。



「まだ起きてるんですね」



閉まり切っていないドアの隙間から漏れる光に、舞織はそちらの方へと足を向けた。



「ええ?!」

「バカ!声がでけぇよ」



ノブに手を掛けよう……としたところで、この大きな声。

舞織は、ビクリ と体を竦ませて、思わずその手を引っ込めた。



「……アイツが起きてきたらどうすんだよ」

「…ごめん…って…そうじゃない。どうしたってそんな事を言うんだ!」

「レン…」

「伊織ちゃんの誕生日会をやらないだなんて!…私は前々から計画を練っていたのに!!」

「!!」



ぺたり と素足がフローリングに付いて、そんな音を立てた。

そして次の瞬間には方向転換を。

急ぎ足に、けれど音を立てないよう、舞織は当初下りてきた目的であるトイレに行く事もせず、階段を一気に駆け上がった。


ソッとそっとドアを閉めて。

ソレにより掛かったまま、ずるずる と腰を下ろした。


俯いたその床に、キラリ と光落ちたソレは、月明かりを浴びて綺麗に光っていたのが、ぼんやりと見えた。