きっかけは何だったかとか



「…、ぅ…あ…」



仕掛けたのはどちらだったかとか



「…っ ぁ あ…!」



今は何月何日の何時何分で

ここはどこで

何をしてるのかとか



「伊織ちゃん…」

「…ふ…ぁ」

「よそ見しないで」



ああもう…溶ける

melt

唇がヒリヒリする…


腫れたり赤くなったり熱を持ったりしてるんじゃないか と指を近づけると目の前の双識に防がれてしまう。



「…ぁ…」



捕まれた腕が、ドクドク と脈打う様をぼんやりと感じていると、腕がそちらへ引かれていった。

と思えば、ぬるり と温かく、それでいて、ざらり とした感触が、その赤い赤い舌が指を、指の間を這い出した。

ゾクゾク と鳥肌が立って、悲しくもないのに涙が零れた。



「伊織ちゃん」

「そ、うし…き、さ…」



泣かないで とあやすように、頬、瞼、額、鼻へと唇が触れる。

瞼を閉じたら、また涙が一筋、頬を伝った。

べろ と舐められて、いよいよおかしくなってしまいそうで、助けを求めて双識の首に腕を回す。



「…っあ、ぁ…ッ」

「伊織ちゃん、静かに、ね」

「…う、っぅ…」



ひたり と冷たい手のひらは、伊織の事などお構いなしに自分勝手に這って動く。

静かにだなんて、何て酷薄無情な事を。


訴える隙もなく口付けを与えられて、伊織は恨みがましい視線を双識に向けた。



「そんな目で見つめないで」



双識は恍惚とした表情を浮かべてそう言った。



「そんな事されちゃうと、あんまりゆっくりやってあげられないよ」

「――っ…ひ、あぁ あっ」

「伊織ちゃん、静かに」



今まで肝心なところには触れずに散々焦らしていたくせに、するとなったら突然で早急で、やっぱり伊織の事などお構いなしで。


細く骨ばった、無骨で長い指が、伊織の中へと一本、小さく水音をさせて、入っていく。。



「…っ、ま…待っ…や あ あぁっ」

「ごめんね、待ってあげられないよ」

「っい、あ ああぁっ んぁあっ!」



指は一本、二本と増えていき、点でバラバラに中を掻き混ぜる。

伊織には肩を震わせて双識に縋る他、術はなかった。



「…ッ……ん、待って伊織ちゃん…このままじゃ服に血が付く」

「…んぁ、……ッ…ごめんなさ…」



余程力を込めてしまったらしい。

ばさり と豪快に服を脱いだ双識のその背中には、じわり と血が滲んでいた。


伊織が慌ててその手を引っ込めようとすると、双識がすかさず掴んだ。



「ベッドに助けを求められるよりマシだよ」

「…でも」

「ほらー、挿れちゃうから早くー」

「ッ、そ、そんな事言わないで下さい!」

「はいはい」

「はいはいじゃなく…って…うあ…!」



意見しようとする伊織を、双識はニコニコとした笑顔のまま押し倒した。

急にバランスを失った伊織は、思わず双識の背へと手を回した。



「そう、そのままでいてね」

「っもー、あとで血まみれになっても知らないですからね」

「望むところだよ」

「っそ……っ!…ぁんんんんぅうう…っ!」



瞬間、青褪める隙も与えず、ぐちゅ と水音を立てて屹立した熱が伊織の中へと入ってきた。

驚きも悲鳴も喘ぎも全部全部口付けに飲み込まれ、ただただ血が滲む様を二人実感していた。



「っは…ひど…い…っ」

「ごめん、そんなにもたなそうだからつい」

「…っだからって…」

「っていうわけだから、動くよ」

「…え、あ…待って、まだ…ッや、やっ」



少しで良いから、深呼吸するだけでも良いから待って欲しかった。


息が詰まるような圧迫感をそのままに、大きな快楽の波が伊織を攫っていく。



「アアァッ ん、あッ ああ…!」

「伊織ちゃん…っ」

「や、ああ っ…双識さ…っあ あっ」



奥へ奥へ、抉るような貫くような律動に、伊織は快楽に飲まれないように唇を噛み占めて堪えた。

双識がソレに気付いて、唇に触れる。



「伊織ちゃん、唇、切れちゃう、よ」

「っあ、だ って……っも、あっ うあっ…ん、ふぅ…っ」

「伊織ちゃん…っ」

「や、ああぁっ!も…むり…っ入んなぁ…っ!ひゃああぁっ」

「…っ、ここが……いい?」

「っ、ちが…っ、やめっ…ああぁっ!」



ビクン と体が跳ねた場所を何度も突けば、より甘美な悲鳴が上がって、双識はうっとりと目を細める。

助けを求めるような視線に口付けで答えて、ギュウと抱き締めれば、ナカもキツク締まって双識は眉を顰めた。



「ッや、も…… た、すけ…っ、イっちゃ…っ!」

「っ、…―――っっ!」



何度も触れる吐息も幾度となく重なり合う唇も溢れ出す蜜も、合わさって交わって溶けていく。





きっかけは何だったかとか

仕掛けたのはどちらだったかとか

今は何月何日の何時何分で

ここはどこで

何をしてるのかとか



全部 全部 溶けていく。




舞織誕生日企画。おめでとう〜!