「それじゃあ、行って来るね」

「レン、晩飯までには帰って来るっちゃ?」

「当たり前じゃないか。あ、でもお昼ご飯は冷蔵庫の中にあるから、温めて人識と食べてね」

「…行ってらっしゃい…」



バタン



「…兄貴どこ行ったの?」

「さァ?」



満面の笑みを浮かべた双識の行く先は……?

秘め事

「じゃあ、こちらに確認の為、住所と電話番号と、お名前を…」

「ボールペンお借りしますね」

「どうぞ」



それから、一時間弱経った頃、双識は、天井も壁も床も白で埋め尽くされた事務室にいた。

これまた白い紙に、黒色のボールペンで、さらさら と必要事項を記入していく。


紙の一番上には、校章と長ったらしい学校名。


何を隠そう、舞織の学校に双識は赴いていた。



「…はい、結構です。では、このプレートをお持ち下さい。入室許可証代わりですので。お帰りの際は返却を忘れずにお願いします」

「分かりました」

「零崎さんのクラスは、今の時間、体育だったと思いますが、もうじきチャイムが鳴りますから、すぐに帰って来ると思います」

「有り難う。ちなみにソレは校庭で?」

「ええ」

「そうですか」



にこり にこり と事務員と終わらない笑みを交わし、双識は廊下に足を踏み入れる。



「体育か……ブルマだと良いなあ…」



白と黒のコントラスト。

双識は、うふふ と笑いながら、以前舞織に教えてもらった教室へと歩いて行く。



「確か、この角を曲がった一番奥の……」

「…お兄ちゃん?」

「伊織ちゃ…ん……?」



三階まで階段上って、右手に曲がった一番奥の教室へ行こうとし、たところで後ろから声を掛けられた。

聞き覚えのある声に、聞き慣れた言葉に後ろを振り返れば、壁に手を付いた舞織の姿。



「ビックリした…どうしたんですか?」

「伊織ちゃんこそ…」

「わたしは、さっき転んでしま…」

「どうしてブルマーじゃないんだい!?」

「……」



どうしてそんな長ったらしいジャージなんか履いているんだい?!

どうして体操着じゃなく、厚手のジャージを…!


叫ぶ双識に、舞織は冷ややかな笑みを浮かべて言葉を遮った。



「お兄ちゃん」

「何だい?」

「立ち話も何ですから、とりあえず移動しませんか?」

「?そうだね、そうしようか」



じゃあ と背を向ける舞織の後を双識は追う。



「…足、どうかしたのかい?抱っこでもしてあげようか?」

「遠慮します」



右足を庇って階段をまた上る舞織に、双識は心配そうに声を掛けた。

けれど、舞織の返答は、まるで心が入っておらず、氷そのものの冷たさ。


質問する事さえも阻まれるオーラに何かしたかなと双識は首を傾げる。


舞織の後をついていくと、やがて一つのドアの前で立ち止まった。



「さ、入って下さい」



ポケットから鍵を取り出してドアを開け、入るよう促される。


パタン と静かに閉まったドアの向こう。



「え、ちょ、伊織ちゃん…っ!!?」

「変態め!」


ゴッ という鈍い音と、ドサリ という何かが倒れる音がした。