このお話はトキこと、零崎曲識がメインのような曲舞話になる予定です。
トキはまだ原作にすら出ていない子なので、勿論ここより先に出てくるトキは捏造のみのものとなります。
ですのでソレを踏まえて 原作にトキが出てきた時に苦情を言わない方のみの閲覧でお願いします。

どんと恋な方のみスクロールでどうぞ〜。





がしゃん



と、ガラスが割れた音がした。

確固たるその意思の名の元に

「ぶっ…げほっげほっ!」

「だ、大丈夫かい?伊織ちゃん」



日本茶を飲んでいた最中の突然の音に驚いて、舞織は思い切り噎せ、咳き込んでしまう。

涙で揺らぐ視界の端、双識がタオルを取りにキッチンへ、汚ぇなぁ と人識が眉を顰めているのが見えた。


極普通、ありふれた日常。

先程の音は幻聴、空耳だったのかな と双識からタオルを受け取って、舞織は濡れた口元を拭った。


水溜りを作ったテーブルを拭いていると



ガシャッ、 ギチギチッガシャアン



今度は先程より大きく、そして長く響いたガラスの割れる音、ていうか無理矢理割ってるんだろう的な音がした。

それでも家族は食事をしている、食事に夢中、ていうか耳栓でもしてる?難聴ですか?お食事大好きっ子ですか?


舞織は、ぱく とロールキャベツを口に運びながらそんな事を思う。



ガッ、ギギギッ ガッ、ガチャッ、ガチャ、ガシャアアン…!



日が落ちたその時間に一向に止まないその音は、不審者の侵入ではないのだろうか。

にしたっても随分な侵入だけれど…


自分だけにしか聞こえない敵、寧ろ幽霊!? と舞織は耐え切れず音の方へと首を動かした。

全く動じない軋識の向こう側、半開いたリビングから見える玄関の横、ガラスが割れていた。


そして割れたガラスの穴から手が覗いていた、赤い手。



「何ですか、あれ」



呆然としてそんな言葉がぽつりと零れた。

そこで漸く双識が舞織へ、それから視線の先、玄関へと目を向けて、ああ と納得したように声を上げた。



「あれはね、伊織ちゃん、トキだよ」

「……トキ?……絶滅寸前の?」



白と赤をした、くえー というよく分からない鳴き声を上げる鳥が舞織の脳裏に浮かぶ。

人識が箸を舞織に向けておかしそうに笑った。



「知ってたかお前、日本産のトキはもう全滅しちゃったんだぜ」

「え?マジっちゃか」

「何で大将が驚くんだよ」

「トキって誰ですか、そもそも何ですか、あれは人間ですか鳥なんですか?あ、寧ろ人面鳥?」

「トキはトキだっちゃ」

「人面鳥じゃあ顔だけ人間だろ」

「あ、…えと、じゃあ鳥人間?」

「手が羽のイメージだっちゃ」

「それはそれはディープインパクトだな」

「え、馬?トキさんは馬なんですか?鳥は?トキっていう名前の馬ですか?あ、人面馬?じゃない、馬人間?」

「ケンタウロスっちゃなぁ」

「あ、知ってるか?ケンタウロスってぇ言えばさ…」

「みんな、話がズレてきてるよ」



女三人寄れば姦しい


双識の脳裏にそんな言葉が浮かんだが、うちに女の子は一人しかいないんだったと思い出す。


そうして立ち上がり、舞織の頭をソッと撫でる。

きょとん とする舞織に笑い掛けて、玄関で騒がしく物音を立てている方へと歩く。



「レン、やめた方が良いっちゃ」

「このままじゃ伊織ちゃんが落ち着いて食事できないよ、喉に物を詰まらせたら大変だからね」

「開けた方が大変だと思うけどな」

「お兄ちゃん、別に無理しなくても良いですよう」

「伊織ちゃんのための無理なら喜んで」



三者三様意見を述べるのを、はいはい と流して、割れたガラスから差し込まれている手に触れる。

その手が、ピク と動きを止めたのを確認してから玄関の鍵を開けた。



「やぁ、トキ。久しぶりだね」



ドアを開けると部屋からの明かりが暗闇の一部をほんのりと明るくさせる。


そうして姿を見せたのは、すらりと高さのある白と赤二色だった。


白が喋る、正確には白色をした肌に、べたり とついた赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤。

明るい鮮血色した赤、こびりついてガビガビとしていそうなドスのきいた黒い赤、赤い赤い赤い赤い赤い赤い色をした青年だった。



「……何故」

「え?」

「何故触れた、何故開けた」



何をも映さない瞳が、端正な顔立ちが、ぐしゃり と歪んだ。




軋識さんノックの一番後ろ、曲識さんのお話が始まる事に胸を高鳴らせ…過ぎました。ちょっと(どころかとっても)暴走中。
200%捏造トキです。原作とは全く違います。ご容赦くださいませ。