いつものように、深くも甘くもない

寧ろ、苦さが残って、心にヒビが入ったようにも思えた。

約束

深くなるかと思われたソレは、ただ押し付けられただけに留まって、ゆっくりと離れていった。


舞織は、そこでハタと我に返って顔を背ける。



「…やっぱり分かってないじゃないですか」

「うん?」

「うん?じゃなくて…」



もう… と口を尖らせるその仕草に思わず手が伸びる。



「っわ……な、何ですか?」

「…イヤ…何となくだっちゃ」



頭の上に手が置かれ、ぐしゃぐしゃ と撫でられる。

無意識の行動だ と言えば、舞織は呆れたようにして微笑んだ。



「…絆されるなんて…わたし…嫌なんですけど…」

「絆されてるっちゃか?」

「…っそうですよ!軋識さんがあんまりに普通過ぎて怒る気が失せちゃったんです!その上、子供みたいに頭撫でるし

 そういう事されるとわたし、弱くなっちゃうのに、軋識さんは無意識だって言うし……

 何だかわたし…一人で怒って泣いて…ホント、莫迦みたいじゃないですか…」



涙が出てくる自分が嫌い と舞織はそうゴチて、軋識の胸に顔を埋めた。



「わたしが喜ぶプレゼントください」

「………」

「……ちょっと、黙らないでくださ……って!ああ!もしや…そ、そんな……ううわ、最低!!軋識さん最低!!」

「…まだ何も言ってないっちゃ」

「じゃあください。今すぐください」

「………」

「ほらやっぱり!!さいて…っ…」



買ってくるの忘れるなんて信じられない! と騒ぐその唇を今度は強引に奪った。

そうして酸欠になった頃に離して一言



「俺をやるっちゃ」



そう、自信満々に言い放った。