ピ――――――――――――――――――――――――――――――――――――……‥‥

教えてティーチャー

「……」



ぐすん、ぐすん

液晶画面を前に必死で涙を拭う舞織の姿を、軋識は半ば信じられないという目で見ていた。


これは得手不得手どころじゃない。

パソコンに嫌われているとはこういう事をいうのか と軋識は一人神妙な面持ちで頷いた。


だが、感心してる場合でも、諦める場面でもない。



「舞織」

「軋識さ…」

「とりあえずこれでも飲めっちゃ。レンが淹れてくれた」

「…ありがとうございます」



湯気の上り立つコーヒーを口に含む。

床を足で蹴って椅子を回す舞織の向かいのベッドに腰を下ろし、ガシガシと頭を掻いた。



「…ちなみに…補習も失敗するとどうなるっちゃ」

「来学期で成績がつかないそうです」

「………はぁ…じゃあ、本腰入れてやるっちゃ」

「お願いします」



ぺたん と頭を膝の上まで下げて、変な辞儀をする舞織を起こして、キーボードに指を置くよう指示。

舞織の後ろから画面を覗き込むが、変な眩しさに文字が見づらい。


軋識はパソコンの置かれたデスクの脇の引き出しからケースを取り出して眼鏡をかけた。



「…見惚れてないでやるっちゃ」

「みっ、見惚れてなんていませんよう!自惚れないで下さい」

「はいはい。…あ、お前。ブラインドタッチぐらいはでき……ないっちゃか?!」

「ブラ?…いやらしいですね、軋識さん」

「なっ!違うっちゃ!キーボードを見ずに文字を打つっていう意味だっちゃ!」

「そんなのできないに決まってるじゃないですか!」

「威張るんじゃない!」

「ひゃうんっ!」



どうやら前途多難らしいこの有様に、軋識は今夜の徹夜を覚悟した。