「あ、本当だ。伊織ちゃんにしては珍しくアヒルさんが一羽いるね」

「…っ……っ」

「もう泣くなっちゃー」

「うううぇええ…」

教えてティーチャー

「一体何が…その、アヒルなんだっちゃ」

「ああ、アヒルじゃなくて数字の2だよ。アヒルに見えなくもないだろ?」

「……ああ、そうだな」

「……情報処理…?が、2らしいね」

「…っ…はい…そ、…そうなん、です…っ」

「具体的には何をする授業なんだっちゃ」



月が顔を出す。

空も町も暗闇に包まれ、今度は大人達で騒がしくなる。


いつもなら日毎に違うエプロンを身に付け、美味しくも不味くもない微妙な夕飯を双識が作り出す時間帯。


四人は ―内一人は既に飽きてテレビを見ている― ソファに座ってテーブルを囲み、家族会議の真っ最中だった。



「具体的には、……パソコンを習う授業です…」

「ふむ、私は専門外だけど…確か、アスの部屋にはパソコン置いてあったよね」

「ああ。仕事用っちゃけど…」

「そ、それで、今回…2、以下を取った人は、二日後に、ほ、補習で…」

「お休みなのに学校行くの?嫌な学校だね」

「…兄貴ー、お腹空いたー」

「ああ、そうだね。もうこんな時間だ。あとは私の専門外の話のようだし…アスに任せるよ」



ぱたぱた

おおよそ男が履くものではないスリッパの音を響かせて、双識はキッチンに立った。


今日はブルーを基調としたハート柄のエプロンだった…


ああ、お腹空いた…


人識は、スペースが開いた隣へと体を預けた。



「じゃあ、舞織…俺の部屋で練習するか?情報処理ならwordか、Excelか…その辺りだろ?」

「…は、い……え!良いんですか?!」

「…余計なトコいじらないんであれば」

「んーっ軋識さん大好きぃ〜っ」



こちらもどうやらハート乱舞らしい。

どこからどう見ても、イチャつくウザったいバカップルに見える。


何でわざわざ大将の上に座る必要があるんだよ…

ああ…諦めずに日本の天辺を目指すべきだった… と人識は眉を顰めて項垂れた。