輪郭 6
バタンとドアが閉まる。



「…ヨンサー、開けてよー」



ああ、頭が割れそうに痛い
輪郭
ドアに凭れ掛かって、ズルズルと。

床に座り込んで頭を抱えた。


経験は無いけれど、まるで二日酔いのように、頭が痛い。



「ヨンサー、僕、湯冷めしちゃうよ」

「じゃあリビングに行ってなよ。そっちの方が温かいから」

「ヨンサァ…」



ドアの向こう側、廊下に立ち尽くして、困り顔をしている潤慶の顔がありありと浮かんできて、英士は閉じていた瞳を開けた。

歯を食い縛って、やりようのない苛立ちに手に力を込めた。



「ねぇ、ヨンサ」

「…」

「僕、明日一番の便で帰らなくちゃいけないんだ」

「………そう……」

「うん」

「用件は…それだけ?」

「………そう、それだけ」



小さく息吐く音が聞こえて、それきり、しん…と静まり返った。



「…じゃあ、僕、下に行くよ」

「………ああ」



床と足とが当たる音が、ぺたぺたと聞こえて、段々と遠ざかっていく。

比例して、熱くなる目頭。


ああ、ちっとも、成長していない…自分。



「ッって、ンなわけないだろ!ヨンサ!開けろ!!」

「…っ!」



ダンッ!!

と背中越しに、びりりと振動。



「い、いやだ」



成長しない

していない



「ヨンサの都合なんか知らないよ!開けないとドアぶち破るよ!!」

「ッできるものならしてみればいいだろ!」



変わらずに

変わらずに


無知で、愚鈍で、分かっているのになんて愚かな…



「ヨンサってば!」

「煩い!!」



ドアノブを下に押して、思い切りドアを押す潤慶と、ドアノブを下げさせまいとドアに体重をかける英士と、どちらが強いかなんて…



「ヨンサ!!」

「黙れッ!!」



その手が、声が、震えている英士が、弱いに決まっている。


バンッ!!



「黙らないよ」



開いたドアは、跳ね返り跳ね返り、パタリと閉まってようやく止まる。



「…ッ来るなよ……馬鹿…」



覆ったその下の表情が、どのようなものかなんて…

後退るその動きからも、搾り出すような声からも、払い除けるその冷たい手からも



「無茶言わないで」

「…っ」



がしりと掴んで引き寄せる。



「泣いているのに、放っておけるわけないだろ!」

「………ッ」