バタンとドアが閉まる。 「…ヨンサー、開けてよー」 ああ、頭が割れそうに痛い 輪郭 ドアに凭れ掛かって、ズルズルと。 床に座り込んで頭を抱えた。 経験は無いけれど、まるで二日酔いのように、頭が痛い。 「ヨンサー、僕、湯冷めしちゃうよ」 「じゃあリビングに行ってなよ。そっちの方が温かいから」 「ヨンサァ…」 ドアの向こう側、廊下に立ち尽くして、困り顔をしている潤慶の顔がありありと浮かんできて、英士は閉じていた瞳を開けた。 歯を食い縛って、やりようのない苛立ちに手に力を込めた。 「ねぇ、ヨンサ」 「…」 「僕、明日一番の便で帰らなくちゃいけないんだ」 「………そう……」 「うん」 「用件は…それだけ?」 「………そう、それだけ」 小さく息吐く音が聞こえて、それきり、しん…と静まり返った。 「…じゃあ、僕、下に行くよ」 「………ああ」 床と足とが当たる音が、ぺたぺたと聞こえて、段々と遠ざかっていく。 比例して、熱くなる目頭。 ああ、ちっとも、成長していない…自分。 「ッって、ンなわけないだろ!ヨンサ!開けろ!!」 「…っ!」 ダンッ!! と背中越しに、びりりと振動。 「い、いやだ」 成長しない していない 「ヨンサの都合なんか知らないよ!開けないとドアぶち破るよ!!」 「ッできるものならしてみればいいだろ!」 変わらずに 変わらずに 無知で、愚鈍で、分かっているのになんて愚かな… 「ヨンサってば!」 「煩い!!」 ドアノブを下に押して、思い切りドアを押す潤慶と、ドアノブを下げさせまいとドアに体重をかける英士と、どちらが強いかなんて… 「ヨンサ!!」 「黙れッ!!」 その手が、声が、震えている英士が、弱いに決まっている。 バンッ!! 「黙らないよ」 開いたドアは、跳ね返り跳ね返り、パタリと閉まってようやく止まる。 「…ッ来るなよ……馬鹿…」 覆ったその下の表情が、どのようなものかなんて… 後退るその動きからも、搾り出すような声からも、払い除けるその冷たい手からも 「無茶言わないで」 「…っ」 がしりと掴んで引き寄せる。 「泣いているのに、放っておけるわけないだろ!」 「………ッ」 |