斎冬紫さまより



姫姉さまがお兄ちゃんに笑いかけるたびに、私は胸が痛むのを感じていた
片思い
甘ったるいはちみつレモンのような感情だとは知っていたけれど
痛めるべきはみいねえさまであるとか、青い人だとか、そんなことも知ってはいたけれど
私は何故か特別、姫姉さまに苦痛を覚えた
それはきっと、共鳴のようなものだったのだろうと思う

「姫姉さまは、ひめねえさまは、何もおっしゃらないのですか。」
「なにも、ってなにをですですー?」

姫姉さまの黄色いリボンが揺れる
この人の危うさの象徴
それが私を誘うように揺れる
こっちにおいでとも言うように
何を言うのか、私はもう、そちら側に立っている

「わかってるんでしょう」
「わっかんないですねー。姫ちゃん頭悪いですからねー。崩子ちゃんのいうことは席料を得ないですよー?」
「…えっと、私は道化を演じている、ということでしょうか?」

しかもそんな道化ではお金も取れないと?
間違ったことを言っていると見せかけて、揶揄するとはなんて高度な…
小さく呟きながら私は姫姉さまから目線を逸らした

「んんー?とうしたんですー?」
「…わかっている、くせに」

あくまでは姫姉さまは私が何を言いたいのかわからないと首を傾げる
しかし私は考える
その可愛らしさの陰には、愛らしい身体には、きっと一度斬りつければ真っ赤な血とともにどうしようもないほどの感情が・想いが、詰まっているのだろうと

「わかっている  くせに」

ひめねえさまの ばか
どうせ、「どうした」の先を私が口にできないこともこの人はわかっている
頭が悪いなんて嘘だ
言葉で壁を作って、逃げて、いるんだ きっと

「そうやって、あなただけ 逃げないでください」


私はこんなにも捕らわれているというのに






「…それでもわたしは、師匠の傍にいたいと思っているのですよ」
その言葉が私に届くことはなかった



斎冬紫さまより頂いてしまいましたよ!!
日記でちょろっと僕姫妄想を書いたら反応して頂けまして!!そこから妄想してななななんとお話を書いて下さって、その上わたしにくださったのですよ。
ドッキリだとしても頷ける、なんですかこの幸せ。この後にどんな試練が待ってるんですか。
どこかで姫ちゃんは皮を被ってるとか、相手によって態度を変えてるっていうのを見たことがあるんですが(どれだったかなあ)
何て言うか…切ないよなあと思います。
本当の姫ちゃんを曝け出せないんですよね、出すのが怖くて、その後が怖くて、好きだから怖くて。
そんな姫ちゃんを見るのは、きっと崩子ちゃんは辛かっただろうなあと。
優しさは時に残酷で、笑顔は時に泣き顔で、嘘は時に身を守るためのもので、姫ちゃんは対殺人には慣れていても
普通の女子高生が当たり前にしている恋だの愛だのを習ってこなかったんだろうな。
その上、ただの女の子じゃないっていうのもあって、人よりも難しくて複雑で深い思いになってしまう。
それでも、健気にいーたんを想う姫ちゃんて、とても素敵だと思います。どんなに辛くてもどこへ向かおうとも、いーたんを好きでいてくれるんだろうなあと。
くっそう、いーたんだけずるい!!愛され過ぎだ!!くっそう!

何やら妄想が膨らんできてしまいました。
優しい崩子ちゃん、その優しさを分かっているけれど分からないふりをする姫ちゃん。
全部全部が優しさでできていて、姫ちゃんは本当に素敵な居場所を見つけることができたんだなあと、切なくも嬉しくなってしまいました。

斎冬さん、こんなにも切ないお話を、ありがとうございましたっ



07.11.25