余すとこなくらびんぐゆー。
『愛している』と


飽きれるほどに、言ってあげるから


早く、来い。



そんな風に思いながら月を眺めたのはいつの事だったか…
余すとこなくらびんぐゆー。
ピピッピピッと小さくアラームが鳴った。



「…………重い…」



ズキズキと痛みの悲鳴を上げる腰に気を使いつつ、体勢を変えようと試みる。

が、間もなくして失敗に終わる。



「――――っっ」



どうやら寝違えてしまったらしく首が痛い。


俺を抱き締めて眠る腑抜けた顔のコイツが俺の動きを封じているせいだ、絶対。



俺ばかり腰が痛くて、その上こんな時間に俺一人目が覚めてしまうなんてズルイだろ。

理不尽と心の中で分かっていながらも、俺はソイツを起こすべくして声をかけた。



「ユン、…ねぇ、ちょっと!」

「んー、…あと2時間〜…」

「それは寝過ぎでしょ」



嫌だ、と言わんばかりに首を左右に振ってまた眠りの世界へ入っていってしまう。



……。



と、俺は無意識のうちにそいつの鼻を摘んでいた。

苦しげに眉が寄せられる。



「…ヨンサ、いひゃい」



パチッと突然瞳が開いた。

驚きに鼻を摘んでいる手を離すのを忘れた。



「…そうだろうね」



冷静を保つものの、バレバレのようで。

ぎゅっと抱き寄せられた。



「ユン、苦しい」

「ねぇヨンサ…約束の言葉、言ってくれない?」

「何を?」

「嫌だなぁ、忘れちゃったの?」



忘れてない、よ。



「忘れたよ」

「相変わらずヨンサの愛は痛いなぁ…どうしたら思い出してくれるんだろうね」

「………同じ、事、…すれば良いんじゃない?」



ふっとユンが笑った。

いつもの、あの、人の心見透かすようなあの目で。



「そうだね」



俺がぼんやりしてると、ユンは呟くように頷いた。

俺を更に引き寄せて、耳元に唇が触れた。



「愛してるよ」

「……」

「どこにいても愛してる」

「…うん」



水のように透き通る声で、俺の耳にそう告げた。



「…思い出せた?」



ニコッと笑まれて、俺は皮肉った笑みを返す。



「さぁね」

「ヨンサァ〜、それはないでしょー?」



酷過ぎるよーと羽交い絞めにされる。


腰が、首が痛いけど、そんなの些細な事で。



「じゃあ耳貸してよ」

「うん?」

「………愛してる…」

「ありがとう、ヨンサ…」



ユンは本当に嬉しそうに笑った。

抱き締めて、頬や瞼や額にキスして、何度も、ありがとうと呟いた。



「……それから…」



頬に手を添える。

俺の手が冷たいのか、ユンの頬が温かいのか。


じんわりと痺れが広がった。



「なに?」

「誕生日、おめでとう」



目を閉じる瞬間、ユンの驚いた瞳と目が合った。

今度は俺が不敵に笑って、そっと唇に口付けた。


驚いた目は俺の唇が離れた後も暫くそのままの状態で、俺は声に出して笑ってしまった。



「流石と言おうかなんと言おうか、全く…ヨンサも人が悪いよね」



驚いた…と漏らすユンに少しだけ優越感が込み上げる。



「最高のプレゼントでしょ?」

「まぁね…じゃあ、もう一回、しとこっか」

「嫌だよ」



するりと、ユンの手が俺の頬に伸びる。


負けず嫌いはお互い様。

頑固なのもお互い様。

負けと引き分けなんて許さない。



二人してニヤリと笑んで。

口付けた。


残りの時間、余すところなくして、イチャつこう。