君を想ふ 1
君を想ふ
「僕は、一体どうしちゃったんだろうね」



ポツリ と零す。


答えを知りたかったのだけど、別に返事を望んでいた訳でもないので、殆ど独り言に近かった。


それでも、君は、ちゃんと気付いてくれる。

いつだって。



「何が?」

「…はぁ…本当に、どうしちゃったんだろう」



自分でも殆ど無意識に出た言葉なので、何がと聞かれても困る。



少しの沈黙の後 俺は今のヒバリの方が好きだけどなー。

と、そんな言葉が、10年前と変わらずの笑みと一緒に返って来た。


さらさら と髪を撫でる手付きも、いやらしく体のあちこちを撫でる手付きも、10年前とちっとも変わらない。



「調子に乗らないでよ」

「痛っ!!」



流されてはくれないかー と言って微笑んだ山本に心臓が、ギリリ と締められた。



そうだ。

僕はどうしてコイツを傍に置いているのだろうか。


何の役にも立たないくせに図々しくも自分を好きだと言って付き纏う。

面倒で邪魔でしかないのに、どうしてなのだろうか。


未だに、自分の山本武への感情が分からない。


好意など…悪意すら、憎悪すら覚えている事を、君は知っているだろうに…


それでも彼は常に自分の傍にいて、好きだ愛してると囁いて、微笑む。


それを歯痒く、辛く切なく思う自分が確かに存在している、ほんの僅かではあるが。



本当、僕はどうしちゃったんだろう。