壱と零の差
例えば、どうして今自分はここにいるんだろうとか。

どうしてこんな、こんなまだ心も体も未発達のような少女を、組み敷いているのだろうとか。

似ていないのにどこか面影が妹と重なるようなこの子を、どうして自分はこんなにも余裕なく抱いているのだろうかとか。


考えたって答えなんか出やしないのに。

出たところで、それをどうすることもできないくせに。


それでも考えてしまうのは、この想いを君に伝えたいと思うからだろうか。
君はそれを愛と呼ぶ
必要なもの最低限、例えばベッドや冷蔵庫、灰皿に小さなテーブル、なんてそんな物しか置かれていない簡素な部屋。

決して狭くはない、けれど無駄に大きなベッドのせいで随分と狭く感じる寝室は、青白い月明かりさえ漏れないほどに、暗い。


そこに響くのは、詰まるような吐息と、ベッドのスプリングが軋む音。


泣き出しそうな震えた声が、背筋を粟立たせた。



「弥子ちゃん、…息、吐いて…」

「…っ、…!は、あ…うぐ、ぅ」



苦しげに細まった瞳から零れ落ちた涙が睫毛を濡らす。

名を呼ばれた弥子は、ゆるりと涙の滲んだ瞳を開けた。


与えられる快感に対応できずに耐えるように震える体。濡れた瞳を何度も瞬かせて、涙を頬に落とした。



「さ、さづ、っ」

「…だから、言った、だろ」

「っ、ふ、え!…あ、ああっ」



止めてなんかあげられないよ、って。

そう告げる代わりに、ぎゅうぎゅうと締まるソコへ、奥へと打ちつけて。

泣きじゃくりながらも従順にしなる背中を抱き寄せて、慰めるように口付けた。



「まだ、痛い?」

「わ、かんな…っ、こわ…い、っ」

「そう」



先に手を出したのはどちらだったか…

今回はこの子が先だったけれど、この子をこんな面倒な穴に落としたのは自分かもしれない。


暗闇で汗と共にキラと光る短い髪を撫でて、申し訳程度に膨らんだ乳房に舌を這わせる。

本人は小さいと気にしているようだが、大きさなんて関係ないものだ、案外。


それに…こんなにもかわいいよ と言い掛けて、薄ら寒いその台詞に吐き気がした。



「っ、ひゃ、あ、ぁ!」

「…ごめん」

「っ、ん、く…ん、んっ」



耐える姿は扇情的、震える体は庇護欲と加虐心の矛盾を煽られて、どうしたらよいのか分からなくなる。

優しくしたい気もするし、脅えさせたい気もする。


淡く色づいた突起に触れて、歯で引っ掛けたり指で摘まんで、その度にイチイチ反応する彼女を見て、
ああ、苛めたいのかもしれないなと思い至る。

何せこの子、人の中のサディズムな精神を引き出すような、魔性だから、な。



濡れた唇に、かみ付くような口付けをしながら思う。


とりとめもない、こんな事ばかり考えているのは、今にも呑まれてしまいそうな自分がいるから。

心も体も全部全部持っていかれて、後戻りするどころか深みにはまっていくんじゃないかなんて恐怖が消えなくて
必死で理性を保たせようと思考する。



「さ、…づか、さ…!」



眩暈を起こしそうな甘ったるい声は、先程ケーキを食べたから?

それとも本能の都合勝手な幻聴だろうか。


震える手で声で求められて、拒めるはずもなく。

汗ばんだ手を握り締めて、体を零にまで密着させる。



いるよ、ずっと傍に。


君がいらないと言ったって。