矛盾 3
「キャプテーン!」



甘えたその声色に眉を顰めつつも、ヤツの隣に探し人あり、と三上は声がした方へ顔を向けた。

部活の時間になっても現れなかったソイツはやはりそこにいた。



「かさ……い?」



バチリと視線が合わさって、手を振ろうとしたら、あからさまなほど分かりやすく視線を逸らされた。


………何だよ、アレ…
矛盾
「渋沢」

「…ん?何だ、三上」



二人がグラウンドを去って行くのを横目で見送りながら、三上はゴールエリアに戻ろうとする渋沢を呼び止めた。



「あいつら、部活出ねぇのか?」

「ああ、笠井の具合が優れないそうだ」

「笠井の?」



具合が悪いなんて、珍しいな。

……最近はめっきり音沙汰だから、アレが原因じゃあないだろうし…

三上は首を傾げて、二人がいる方角へと目をやった。



「なぁ、三上」

「ん?」



不意に呼ばれて、思考を一時中断する。

グローブを嵌めながら、渋沢は怪訝そうな表情をして三上を見た。



「最近、笠井と何かあったのか?」

「何かって?」

「…イヤ、何もないなら良いんだ」

「…?オイ、渋沢。何か知ってんなら――」

「試合を再開するぞ、配置に付け」

「……」



目を逸らす笠井といい、変な事を言う渋沢といい、今日は、俺の誕生日だってのに、何だってんだよ…



「三上、早くしろ」

「…ああ、悪ィ」



時間はまだいくらだってあるんだし…部活が終わったら、笠井のトコに行けば良いじゃねえか…


ふるふると邪念を払うように首を振って、三上は自分のポジションへと走った。