「キャプテーン!」 甘えたその声色に眉を顰めつつも、ヤツの隣に探し人あり、と三上は声がした方へ顔を向けた。 部活の時間になっても現れなかったソイツはやはりそこにいた。 「かさ……い?」 バチリと視線が合わさって、手を振ろうとしたら、あからさまなほど分かりやすく視線を逸らされた。 ………何だよ、アレ… 矛盾 「渋沢」 「…ん?何だ、三上」 二人がグラウンドを去って行くのを横目で見送りながら、三上はゴールエリアに戻ろうとする渋沢を呼び止めた。 「あいつら、部活出ねぇのか?」 「ああ、笠井の具合が優れないそうだ」 「笠井の?」 具合が悪いなんて、珍しいな。 ……最近はめっきり音沙汰だから、アレが原因じゃあないだろうし… 三上は首を傾げて、二人がいる方角へと目をやった。 「なぁ、三上」 「ん?」 不意に呼ばれて、思考を一時中断する。 グローブを嵌めながら、渋沢は怪訝そうな表情をして三上を見た。 「最近、笠井と何かあったのか?」 「何かって?」 「…イヤ、何もないなら良いんだ」 「…?オイ、渋沢。何か知ってんなら――」 「試合を再開するぞ、配置に付け」 「……」 目を逸らす笠井といい、変な事を言う渋沢といい、今日は、俺の誕生日だってのに、何だってんだよ… 「三上、早くしろ」 「…ああ、悪ィ」 時間はまだいくらだってあるんだし…部活が終わったら、笠井のトコに行けば良いじゃねえか… ふるふると邪念を払うように首を振って、三上は自分のポジションへと走った。 |