beloved 1-6
許して
The pain
ここはどこだろう…

ぼんやり、そんな事を思った。



走りに走ってこれでもかと走ってまた走って走って。

気付けば、外にいた。



ふらりふらり、と覚束ない足取りで、近くにあった木に寄り掛かった。

そのまま、ずるずると背中を木に擦って、ペタリと座り込む。


長い時間走っていて、急に止まると、ホントに苦しい。



「…はぁ……っはぁ……げほっ…ゲホッ…うぇっ…」



喉の奥が、鼻が、目頭が、ツンとした。


吐く


そう思った時には、とてつもない嘔吐感が込み上げてきた。



「う…うぇ…っ…か、…はっ…」

「誰かいるのか?」

「…っ……っ」

「笠井?!」



星空と月の明かりの元、突然目に当てられた強い光に、思わず目を瞑る。


ああ、すまないと一言詫びて、渋沢先生は懐中電灯の光を俺の足元へと向けた。



そしてそのまま、俺の元へと歩み寄ってくる。



ソレが、何かと重なった。





誰かの悲鳴


誰かの嗚咽


誰かの罵声



そうだ、…あれは…






「あ…、あ…っ…―――――――ッッッ!!!……ご、ごめんなさ、…っ…ごめんなさいっ」



脳裏に響いた声は、何か、一括りにできない感情を沸き上がらせた。





謝らなきゃ謝らなきゃ


それしか浮かばなくて



何に対して


誰に対して


何も何も分からなくて…





「………大丈夫だ…怒ってないよ…」



そんな


誰にでも言えるような


そんなたった一言が


俺に


懐かしさと、安心を与えた。





誰に言ってもらったんだっけ…





そんな事を、薄れゆく意識の中で


思った。