beloved 1-5
触れ合う瞬間が



怖い…

The uneasiness element
「先生、この服はどこに仕舞えば良いんですか?」

「…」

「…三上先生?」

「…ん?…………あ、そっか…先生って俺か…」

「まだ実感沸かないんですか?」

「ん、まぁ…、あ、その服は全部、クロゼットの中で」

「はい」



案内された部屋は、何とも殺風景な部屋だった。


部屋の真ん中、たった1つ置かれたダンボールを開けてみると、中には、数え切れないほどの服が入っていて。

というか、数え切れないほどの服しか入っていなかった。



俺が服をクロゼットに仕舞っているその横で、先生はパソコンのコード接続を行っていた。



服を広げてハンガーに掛ける時、微かに匂う香りが何故だか右腕を軋ませていて、一刻も早く終わらせたかった。





こんなに痛むのも

こんなに泣きたくなるのも

こんなに懐かしい気持ちになるもの


とてもとても久しぶりで


懐かしさと恐怖が溢れた





ほら、な、大丈夫だろ。



お前は俺を、そして俺はお前を…






「また…腕が、痛むのか?」

「――――――――ッッッ!!!?っ痛ッッ!」



霧がかった視界に、突然飛び込んできた人物に、驚くよりも先に体が動いた。

腕に触れられた、という事実だけで体が条件反射してしまう。


仰け反るように後ろに下がれば、広くもない部屋の壁にすぐにぶつかるのは当然の事で。

俺は、運悪く、角に頭をぶつけてしまう。


がつんという音と共に、視界が、ぐらりと歪んだ。



「おいっ!大丈夫か!?今スゲー音して…」



何が何なのか分からなくなってしまって、とりあえずぶつかった後頭部に触れてみる。





ぬるり





と、ドス黒いソレは

まるで俺のようで



プツン、と、糸が切れた。



「おい!笠井っ!」



ほんの一欠けらの理性で、俺は逃げるように部屋を出た。



あの部屋には、いたくなかった。