触れ合う瞬間が 怖い… The uneasiness element 「先生、この服はどこに仕舞えば良いんですか?」 「…」 「…三上先生?」 「…ん?…………あ、そっか…先生って俺か…」 「まだ実感沸かないんですか?」 「ん、まぁ…、あ、その服は全部、クロゼットの中で」 「はい」 案内された部屋は、何とも殺風景な部屋だった。 部屋の真ん中、たった1つ置かれたダンボールを開けてみると、中には、数え切れないほどの服が入っていて。 というか、数え切れないほどの服しか入っていなかった。 俺が服をクロゼットに仕舞っているその横で、先生はパソコンのコード接続を行っていた。 服を広げてハンガーに掛ける時、微かに匂う香りが何故だか右腕を軋ませていて、一刻も早く終わらせたかった。 こんなに痛むのも こんなに泣きたくなるのも こんなに懐かしい気持ちになるもの とてもとても久しぶりで 懐かしさと恐怖が溢れた ほら、な、大丈夫だろ。 お前は俺を、そして俺はお前を… 「また…腕が、痛むのか?」 「――――――――ッッッ!!!?っ痛ッッ!」 霧がかった視界に、突然飛び込んできた人物に、驚くよりも先に体が動いた。 腕に触れられた、という事実だけで体が条件反射してしまう。 仰け反るように後ろに下がれば、広くもない部屋の壁にすぐにぶつかるのは当然の事で。 俺は、運悪く、角に頭をぶつけてしまう。 がつんという音と共に、視界が、ぐらりと歪んだ。 「おいっ!大丈夫か!?今スゲー音して…」 何が何なのか分からなくなってしまって、とりあえずぶつかった後頭部に触れてみる。 ぬるり と、ドス黒いソレは まるで俺のようで プツン、と、糸が切れた。 「おい!笠井っ!」 ほんの一欠けらの理性で、俺は逃げるように部屋を出た。 あの部屋には、いたくなかった。 |