コンコン

コンコン



そうやっていつまでも止まないそのしつこい音に、舞織は意識を浮上させた。

ディア マイ シスター

まだハッキリしない頭をそのままに、欠伸と共に、ほろり と零れた涙を拭う。


ノックはまだ止まない。



「……誰?」

「…い、伊織ちゃん?…私…えっと…双識だけれど」



仕方無しに声を上げれば、ノックの音が止まり、代わりにくぐもった声が聞こえてきた。


ノックのしつこさとは裏腹に、ドアは一向に開く気配がなかった。


応とされるまで入らないのだろうか…

けれど応と答えが変えるまでノックは続いたことだろう…


まどろっこしい人だな と舞織は眉を顰めた。



「何ですか?」

「夕食ができたから…一緒に食べないかい?それとも、また…いらない?」

「……食べます」



いらない

そう答えようと思ったのだが、きゅるるる とお腹がイエスと答えた。


何せ今日は朝から何も食べていないのだ。

気持ちはいっぱいだろうと、ソレは腹の足しにはならない。



「…そ、そうかい!?良かった、それなら伊織ちゃんの分もよそうからね。三分ぐらいしたら下りてきてくれるかい!?」

「…分かりました」

「ありがとう!」



渋々と、そして小さな小さない声で返したというのに。

双識は、嬉しそうに…そう、顔を見ずともきっとドアに近寄って嬉しそうな表情でいるに違いない。


ありがとうだなんて…わたしに向ける言葉じゃないのに…



「……はぁ…」



素直じゃなくて可愛くない と舞織は小さく息を吐く。


どうしたら認めてもらえるのか分からない

どうしたら家族として受け入れてもらえるのか、壁を解いてくれるのか

分からないけれど…


双識はきっと…初めから、疑う事も距離を置く事もしていなかった。

昨晩だって、双識は、誕生会をやらないのか と驚いていた。


ずっとずっと、楽しみにしていてね とまるで楽しみにしているのは自分の方じゃないかと、そうやって冷めた思いで言葉を受け流してきた。



どうしたらどうしたら と考えて涙して

けれど結局の原因というのは……



「…壁を作ってるのは、きっと……」



舞織は、夜目に慣れた瞳を真っ直ぐドアへと向けた。



「…………こんな不貞腐れた顔じゃ、失礼ですね」



きっときっと酷い顔。

泣いて悩んで落ち込んで…



ぺちぺちと強く頬を叩いて、舞織は部屋を出た。