真剣で厳しい瞳

けれど、ちっとも怖くない


それは、愛故?




「きーししーきせんーんぱいっ」

「…舞織」

「入っても良いですか?」

「ああ」



ドアから顔を出す。

ニコッ と微笑むと、先程までの表情が一変、幾分柔らかい笑みが返ってきた。



「うふふ」

「…どうした?ご機嫌っちゃな」

「どうしてだと思いますー?」



ぱたぱたっと小走りに、けれどスキップせんばかりに浮かれた足取りで、軋識に歩み寄る。


座るその椅子に近づけば、そっと手が伸ばされて、持ち上げられて、

気付けばいつもの定位置。


ふかふかの椅子に座るその軋識の足に、跨ぐようにぺたんと座る。

惜し気もなく晒される白い太腿に、冷たい手が、いやらしく這う。



「さぁな。どうしてそんなに機嫌がいいっちゃ」

「うふふ、軋識さんもきっと喜んでくれますよ」

「だから、なに」



甘えるように鼻を擦り合わせて、唇が触れそうなほど近くで言葉を交わす。



「キケンビ終わったんです」

「つまり?」

「えっちし放題?」

「阿呆…女がそういう言葉使うんじゃないっちゃ」



だって…

そう言い掛けたところで、コンコン というノックの音。


その音に、重なりかけていた唇が一旦遠のいていく。

舞織は不愉快そうに眉を顰めた。



「会長、そろそろ会議が始まりますけど」



くぐもった声。

どうやら入ってくる気はないらしい、役員の声だった。


軋識は壁に掛かった時計に目をやった。



「ああ、今行くっちゃ」

「分かりました」

「というわけで舞織…俺は行くっちゃけど…そんな膨れッ面するなっちゃ」

「…誰がさせてるんですか」



ぷく と頬を膨らまして、言われる前に舞織は軋識の上から退いた。



「わたし、もう帰ります」

「待っててくれないっちゃか」

「わたしより会議が大事なんでしょう?」



すたすたとドアへ歩いて行ってしまう舞織の腕を掴む。

尖らせた唇に、自分のソレを押し当てて、さて、どうしてご機嫌を直そうかと軋識は苦笑した。



「ベタベタに甘やかしてやるっちゃ、今夜は」

「…今夜?……家に来てくれるんですか!?」



一転

パアア、と明るくなった表情に、軋識は込み上げる笑いを必至で抑える。



「ああ。だから鍵開けて待っててくれっちゃ」

「絶対!絶対ですよ!」

「ああ」



約束 と、もう一度、唇が重なる。


そうして、今度こそ本当にスキップして廊下を歩いて行く舞織を見送って


軋識は一つ伸びをして、舞織の行く反対方向へと足を向けた。




甘さ目指して偽と成す。その心は、妄想と捏造の真骨頂。うふ、お粗末です。

学園モノが熱いです。(その弐)

舞織 一年生 図書委員 生徒
軋識 三年生 生徒会長 生徒

濡れ台詞で10の御題:6「ベタベタに甘やかしてやるよ、今夜はな」

お題提供元:リライト



06.02.04-06.03.12のぱちでした