起き上がれないこの状態では赤い舌が、ちらちら と見え隠れするのしか見えない。

恥ずかしさに目を閉じたいと思っても、先程の言葉が頭から離れない。


大きくないだろうソレを、口に含んで愛撫するその様を、顔から火が出るほど恥ずかしいと思うのに

どこか一部は酷く冷静で


まるで、犬のようだ と思った。



「…バター…犬…?」

「ぶっ!」

約束

軋識は口をパクパクさせた。

コイツ、今、何て…!?



「…あれ、違いましたっけ?」

「――――ッッ…お望みならそうしてやるっちゃ」

「え…?あ、ちょっ………きゃ っ」



混乱する舞織をよそに、軋識は舞織のその細い足を一本、持ち上げた。

掛かっていた毛布が、ずるずると太股の方へ寄っていく。


その足が肩に担がれて、下ろす事を許さない。



「や、軋識さ…」

「今日はお前の誕生日だっちゃ。望むままにしてやる」

「っ、望むって…わたし別に……ああ っ」



本当に犬のよう と冷静な部分が、淡々と。

やめて 恥ずかしい と声と脳内が叫ぶ。


秘所を、べろり と舐める軋識が本当に憎らしくて、それでも舞織は為す術なく、肩を震わせた。



「きししき さ やめ ッ」

「バター犬だと言ったのはお前だっちゃ」

「っああぁ 、っ き、たないからあ…!」

「そんな事はないっちゃ」

「っ、それでも…や、あっ ひ…ぁ!」



縋るものが欲しくて、しわくちゃになったシーツを握り締める。

溢れる愛液と舌が、わざと音を出しているようで、それすら憎くて、恥ずかしくて恥ずかしくて…



「死に、そ…」

「そしたら俺も、死んでやるっちゃ」

「…ふ、ぅ …っんん…っ」



強請られるままに、強引な口付けを受け入れて。

自ら舌を差し出せば、これでもかと、いじめられた。



「一回イカせてやる、余裕もなくて…悪い、っちゃ」

「…え?」



溶けてしまった思考は、零れた言葉を拾えない。

首を傾げる舞織に、焦って縺れる手元に苛立ちつつ、やっとの思いで怒張した己を取り出す。



「力、抜けっちゃ」



額に、ちゅ と唇が触れる。

ひた と触れたソレに、舞織の体が強張った。


が、そんな事に構っていられるほど、余裕はなかった。



「っ、ああぁあ…んんうううっ…!」



心臓が裂けるような悲痛な声を聞きたくなくて、口を塞ぐ。

ぼろぼろと零れる涙に、こちらまで目頭が熱くなる。


血は出ずに済んだ、それでも急な挿入に驚いた舞織を慰める言葉は見つからず。

小さな嗚咽を漏らす舞織の髪に、ソッ と触れた。



「舞織…俺…」

「きししき、さん」



その手に、ゆっくりと舞織の手が重なる。

震える冷たいその手を握り返すと、舞織は目に涙を滲ませて、笑ってみせた。



「軋識さんの方が、悲しそうですね」

「……」

「大丈夫ですよ」

「…でも」

「そんな、今更やめられるんですか?」

「…それは……」

「わたし、軋識さんとお付き合いする時に決めたんですよ」

「なに、を」

「凄く幼いあなたを、全部受け入れよう って」



確かに、悲しくなる時も憎らしくなる時も別れたくなる時もあるけど、それでも、思ったんです

と、舞織はその手を解いて、背中に両手を回し、てギュウ と抱き付いた。



「あなたを、全部は無理でも、全部に近く、受け止めようって…だから…ね?」

「…まい おり…」

「それに、今日はわたしの望むまま なんでしょう?」



最後にいたずらっぽく笑って。



ああ、どうして


お前はそんなにも必死で

俺はこんなにもいっぱいいっぱいで


恥ずかしいぐらいのこの恋は 永遠に続いてくれるのだろうか…



「舞織…ッ」

「はい」

「なるべく…痛くないように、するっちゃ」

「はい」



永遠に続けと願う。


約束するように、口付けを交わした。




舞織誕生日企画の話でした。

ここまで読んで下さってありがとうございました!