コトリ とお皿が小さな音を立てて、だだっ広いテーブルに並べられる。

舞織はソレを満足気に眺めながら、エプロンを外した。



「んんー、まぁーだ寝てるんですかねぇ…」



時計を見て、それから二階の寝室辺りに目をやる。

お寝坊さんめ と口を尖らせつつも、表情は柔らかい。


舞織は、湯気立つ温かい朝食に背を向けて、寝室へと足を向けた。

聖なる朝に…

「ひーとーしーきーくんっ」



寒い廊下を小走りに寝室のドアを開け、するり と身体を滑り込ませて素早くドアを閉める。

暖房でも付いているのか、部屋はほんのりと温かい。



「朝ですよー、起きて下さーい」



ダブルベッドの中央陣取って、舞織の布団まで被って寝ている人識に苦笑しつつ、ベッドに片膝掛けて、人識の体を揺する。

と、布団から、ぬっ と手が出てきて、舞織の手をがっつりと掴んだ。



「!?わ、あっ」



驚く間も与えられず、グイ と引っ張られる。



「おはよ」

「っも、もう!」



ビックリした! という言葉は、くぐもっていて。

気付けば、舞織も布団の中へと引き摺り込まれていた。


甘えるように鼻を擦り合わせて、人識はまだとろりとした瞳で舞織に微笑みかける。



「まだ眠いんですか?」

「ん、もうちょっと寝たい…」



だから舞織も一緒に… と掠れた声が耳に届けば、嫌とは言えなくて。

まぁ、嫌と言ったところで、舞織の細い足に絡まった人識の足が許してはくれないだろう。



「…仕方ないですねー」



もう と口を尖らせれば、ソレに人識の唇が、ソッ と触れる。



「オヤスミ」



半ば夢の世界へ足を浸からせている人識が夢現にそんな言葉を呟いた。


そんな人識を、愛おしげに見遣って、舞織も人識に寄り添うようにして目を閉じた。



聖なる朝は、貴方と共に、始まりたい。