そして、程なくして、沈んだ意識が浮上してくる。

くらくら

ゆっくり体を起こして辺りを見回す。

しん… と静まり返った薄暗い部屋に、舞織は言いえぬ不安に、ふるり と体を震わせた。


と、不意に心臓が締め付けらていれるような息苦しさに襲われ、胸に手を当てる。



「……苦しい…」



ドクッドクッ と心臓がいつもより速く、そして強く脈打っている事に、首を傾げる。



ドクッ



「…あ、…れ?」



ドクンッ



眩暈のようなものが舞織を襲う。


ぐらり と体をよろめかせ、それでも何とか体勢を保った後に襲ってきたのは、紛れもない情炎。



手が震える

体がいう事を利かない

全身が、燃えるように、熱い



「…は ぁ…っ」



全身から力が抜けて、起こした体は、ガクリ と突っ伏してしまう。



「舞織ー、起きたかー?」

「…ッ人識く…」



ガチャリ と開いたドアから、グラスを持った人識が顔を覗かせた。


弧を描いて作られた笑みは、徐々に失われていく。



人識は何も言わないまま、ドアを閉め、手に持ってグラスをテーブルに置いた。


うつ伏した舞織を起こして、背凭れに寄り掛からせる。



「どうした?」

「……か…体が……」



おかしい… と続くはずだった言葉は、遮られてしまう。


ちゅ と音を立てて離れた唇に、霧掛かった思考は何が起こったのか、ついていけない。

それどころか、もっと と強請るように舞織は目を閉じた。


自分の理性に反して、どこか…本能が求めるソレを、人識は与えずに、ソッ と離れた。



「えっちなこと…するか?」



唐突過ぎる、突拍子の無いその言葉も、今だけは訝しむ力さえも残っていない。

ただ、その言葉がするすると入ってきて、鼓膜を響かせた。


そして、その言葉にはまるで魔法がかかっているかのようで、誘われるままに、促されるままに、有無を言わされぬままに

こくり と一つ頷いた。


すると人識は、再び口を弧に歪めて、舞織に噛み付くようなキスをした。