ちりん、ちりん

にゃんにゃんにゃん

着てしまうと、案外平気だった。


黒色は嫌いじゃないし、短いけれども上下の服はふあふあしていて気持ちが良いし、カチューシャもした事が無かったので新鮮だった。

勿論先っぽに付く耳も黒いふあふあで触り心地が良い上に可愛くて。

首輪だって好きな赤だし、動く度に、ちりちり と鳴る鈴が面白かった。



「人識くん、尻尾は付けなくて良いんですか?」



舞織の視線の先には、手に握られた尻尾。

黒のふあふあ、首輪とお揃いの色の赤いリボンが可愛らしい。

首と同じ鈴が、付けて付けてというように、ちりちり と鳴った。



「………」

「人識くん?」

「………ん?え?…あ、ああ……なに?」



ぼー っと突っ立ったままの人識に、舞織は首を傾げて、掌を翳す。

ぱち とこちらを見つめたその目に舞織は、寝ちゃダメってさっきも言いましたよねぇ? と口を尖らせた。


思わず見蕩れてしまった などと言えるはずもなく人識は、悪い と一言詫びた。

そして自分がしていただろう間抜け面を想像して眩暈を起こす。


ちりん という可愛らしい音を立てて興味深そうに自身の服を見ている舞織は、とても可愛らしくて、くらくら と今度は違う理由で眩暈がした。


がっつかないでいられるか、不安だ。



「悪い じゃなくてその尻尾ですよう。付けなくて良いんですか?」

「良いんだよ、コレは後で。俺が入れてやるから」

「…?、入れ…?」

「まぁ良いんだよ、後で分かるから」



舞織がその尻尾をもっと近くで見ようとして、ソレを制される。

尻尾は人識の傍ら、舞織から死角になるところに置かれてしまう。



「それより、ほら」

「ぅわ…っ」



グイ と引っ張られて、人識のかいた胡坐の上へと向かい合わせに跨ぐように座らされる。



「甘やかしてやるよ」

「――ッ」



耳元で囁かれて思わず体が竦む。

人識は楽しそうに笑んだまま、舞織の顎を持ち上げた。



「でもな、」

「?」

「さっきも言ったけど。俺、猫を甘やかしたいんだ」



だ か ら さ

人識の口がそう動く。



「猫みたく可愛く鳴いてくれなー」

「え…」



次の瞬間に言葉は塞がれる。

ふわ と触れた人識の唇は、舞織の了承もなしに口内へと入り込んでくる。



「んんっ、んくっ…ん、」



そうしてあっという間に絡め取られて、くちゅくちゅ と卑猥な水音を脳髄に響かせていく。



「舞織、ほら、…鳴いてみ?」

「…ぁっ、あっ、…ッひぅっ」



額を、コツン と合わせて人識は微笑む。


右手はいつの間にか、あのふあふあの上着の中に侵入していた。

細い指が肌を存分に撫で回した後、柔らかな頂に突起を見つけ、ソレを執拗に愛撫する。



「やあぁっ、あっ あっ!」

「猫はアンアン言わねぇだろ?ほら、にゃあって言ってみ」

「ぁ、ひあっ、…に、にゃあぁっ!」

「イイコ」



褒美とばかりに先端を、キュウ と摘まれて、舞織の体が、ビクビク と仰け反る。

人識はそのまま後ろに倒れてしまわぬよう、すかさず背に手を回して支えてやる。



「ああ、コッチも弄ってやらないと可哀相だよなあ?」



そう言って人識は服を捲くり上げて、反対側の突起を口に含んだ。



「…ふ、ぇ?…ッ、ぁっ ぁっ…あぁ、んッ!」

「舞織…」

「にゃ、にゃあ、ァ!」



嗜めるような言葉は突起に歯が当たってただ刺激を与えるだけで、舞織は辛そうに首を振った。



「うん?何が嫌なんだ?言ってみ?」

「…喋らな…ッ、ん、ふ…ぁああっ」

「ほら、にゃあって、言い忘れてる」

「あ、にゃ…あっ、しゃべ、っちゃ、だめ、…にゃ、ア!」

「!!!」



ビクビク と震え、人識に縋るようにして言葉を放った舞織に、人識は心の中でガッツポーズと共に叫んだ。



――――っ堪んねぇッ!!!


だって、こんな、語尾に「にゃ」は男のアコガレだろう!

けれど、こんなに、イイものなのか!?


コイツだからか?

コイツだから…こんな…



ああ、マジで、がっつかないでいられるか、不安だ。



「あ、ゃ…人識く、何か、当たって…」

「ん?ああ、だってお前、すっげー可愛いよ」

「……恥ずかしいですよう…」

「……」

「あっ、恥ずかしい…、にゃあ…?」

「!!!」



俺、今日から猫好きになる!



「可愛いから褒美な」

「えっあ…っ、きゃあぁっ」



思い切り突起を吸い上げて、それから音を立てて口から離す。

片方の突起は痛そうに赤く腫れ上がり、もう片方は、てらてら と光り、意地悪な愛撫に両方とも硬さを増してその存在を主張していた。



「ほら、もうコリコリ」

「やっ、やぁっ、…ひとしきく、っ…にゃあぁ」



その突起を見せつけるよう摘み上げる人識に舞織は堪らず悲鳴を上げる。


体の中が、じんわり としてきて、中心が熱を持って疼く。

無意識に膝を擦り合わせる舞織を、人識は目敏く見つける。



「ごめんごめん」

「…?ひ、ゃッ!」



流れるように言葉を吐きながら、足に手を這わす。

滑らかなそれを堪能しながらも、その手は太腿の方へと這ってゆく。


跨いでいるせいで上手く膝を閉じられないのをいい事に、人識は難なく足の付け根の所まで撫で上げた。



「こっちも。弄って欲しかったんだよな。気付かなくてごめんな」

「ゃ!やだっ、んああぁっ!」



下着の上から指先を使って、ソコを何度も何度も行き来する。

するとすぐに、じんわり と湿ってくるのが分かる。



「気持ち良いんだ?」

「っ、んッ、…あ、ぁ」



もはや言葉を喋る事すら億劫そうに首を、ゆるゆる と横に振る。



「へぇ?それじゃあ、気持ち良くさせてやらなきゃな」

「ぇ…っ?」



人識は、ニッ と微笑んで舞織を抱き上げる。

そしてそのまま二階へと上がる。

勿論、尻尾を途中で拾い上げるのも忘れなかった。





「よっと」

「わっ、ぷ…」

「んじゃあ、続きな」



幾度となく入った事のある見知ったその部屋、人識のものにしては大きいシングルベッドへと放られる。

そして間を置かずに唇が降ってきた。


舞織はキスを受けながら、ふ と考える。



どうしてわざわざ二階に?



そこで一つの可能性が浮上してくる。


このまま、硬くて冷たいフローリングのリビングでする事を避け、敢えて柔らかなベッドのある二階を選んでくれたのだとしたら…

舞織の為に…


自分の独り善がりかも知れない。

都合の良い勝手な解釈かも知れない。


けれど、もし…

もし、そうだとしたら…



じわじわ と泣きたくなるような嬉しさが込み上げてきて、胸が、きゅん と苦しくなる。

人識が舞織のその様子に気付いたようで優しく髪を撫でた。



「どうした?」

「…人識くん…」

「ん?」



えへへ、と笑って一言。



「ありがとう、にゃあ」

「……」



人識は今度こそ、本当に気絶するかというほどの強い眩暈を覚えた。



嗚呼、もう…どうしてくれようか。