ある日、テーブルの上に、5つのプリンが置いてありました。

おやつ そのゆくさき

「『四人で仲良く食べてね、ママより、うふ』だって」

「…俺とレンと人識と舞織と……どうして一つ余分にあるんだっちゃ」



黄色い半固体が入った容器が、どう数えても五つ、テーブルの上に並べられていて、軋識は首を傾げた。


脇では、人識と舞織が目をキラキラと輝かせ、その容器を見つめていた。

ちなみに、人識は椅子の上、舞織は双識に抱き上げられてテーブルという高い高い障害を突破していた。



「そりゃあもちろん、おれのためだろ!」



さも当然とばかりに二つの容器を手にしようとする人識。

けれど、後ちょっとのところで容器に手が届かない。



「その自信はどこからくるっちゃ」

「んーっ……んん?おやじとおふくろのあいから?」

「意味が分からないっちゃ」

「はいはいはいはい」



ビシリ とまっすぐに手を伸ばして挙手をしている舞織に苦笑しつつ、はい、舞織どーぞ と指差してやる。



「わたしがもらいます」

「は?」

「れでぃふぁーすとですよ、きししきおにいちゃん。そうしきおにいちゃんもそうおもうでしょ?」



こちらもさも当然とばかりに、余る一つのプリンが自分の物だと主張した。


血が通ってなくても性格は似てくるものなのだろうか…


そんな遠い事を考える軋識はさておいて、話を振られた双識はニッコリと微笑んだ。



「そうだね、勿論その通りだよ」

「ほら!」

「レン…適当に頷くなっちゃ」

「そうだよ、あにきー!おれはー?」

「ふむ…私は人識にも権限があると思うのだけれど…どうしようね、アス」

「知るか…」



ぎゅるるるる



「おなかすいたですよー」

「なー」



顔を見合わせ、お腹を押さえる二人の仕草に、双識はハタと思いついた。



「よし、アス。こうしよう」

「?」





―そうして――――――





「いただきまーす」

「まーす」



ぱし と両手を合わせて小さくお辞儀。


喜色満面な顔して、小さな二人はその黄色い物体をスプーンで掬って、口へと運び込む。

口内に柔らかく蕩けるような食感が伝わり、口いっぱいに甘い香りが広がっていく。



「おいしーですーっ」

「それは良かったね」

「でも、ふたりはよかったのか?」

「うん?何がだい、人識」

「おれたちがふたつずつもらって、ふたりはひとつをはんぶんしてる」

「…おにいちゃん、わたしのはんぶんいりますか?」



漸く持てるその容器を差し出す舞織の姿に、双識は眉を寄せてブルブルと震えた。



「ありがとうっ伊織ちゃんっ!」

「うなー、プリンがこぼれるですよー!」



絞め殺さんばかりに抱き締められ、あわあわと慌てる舞織と

幸せを噛み締める双識と

密かに双識の分をも口に含んだ軋識と

舞織の残りを掻き込んだ人識と


そうしていつものおやつタイムが過ぎていった。